2013/12/04

俺の歌聴いて


伝わるか分からないけれど書いてみようシリーズです。


ある日のこと、夕方の通勤ラッシュの時間帯にメトロに。
混雑していたし疲れていたので、
何本か見送り、ようやく少しだけ空いている車両がきたので乗り込みました。
すると、何故その車両が少しだけ空いていたのか理由がわかりました。
車内弾き語りのお兄ちゃんがいたからでした。
(車内の音楽家は無許可の人々)

しかもオレオレっぽい男性で、
英語の歌を格好よさそうに(それはよさそうに)弾き語っている。
〝だから空いてたのか〟
メトロと彼の歌は進んでいきます。
私は疲れ、心も閉じ気味です。

次の駅のホームには、更に沢山の人がホームで待っていました。
ドアに近かった彼はギターで歌いながら、歌をうまいこと途切れさせずに降車しました。
〝そこ、途切れさせたくないよねー、kodawari、oreore(rは仏風に)〟
と彼をエールと共に見送ったところ、
何とオレオレ君は駅の名を見てまた戻ってきました、ギターで弾き語りながら。
〝間違えたんかーい!また乗るんかーい!〟
車内はぎゅうぎゅう、どことなく皆も同じ気持ちだったみたいで
するとそれを察したのか歌い続けるオレオレ君はギターの角度をシャッと立て体積を縮小
「皆さんに迷惑はかけませんし、俺は俺で歌い続けます、シンガーですから」
という表明を(したように見えた)。
皆が少しずつ隙間を空けて、彼は扉ぎりぎりに乗車
(背筋を使って扉が閉まるのを待つ感じ)。
そして扉が閉ま、らない!
前の電車が詰まっているのかなかなか発車しません。
彼はラブソングを歌い続けます、シンガーですから。

そんな状況にも屈せず、むしろヒートアップする彼に
車内からも同情する目線や微笑みが飛び交い始めた頃、
オレオレ君越しに、ホームで官能的な接吻を交わす恋人達が映り込んできました。
どう官能的かと申し上げますと、ほとんど動かないのです。
彼女は彼の首に、彼は彼女の腰に腕を回し、
唇のみ、ほんの時々、わずか数ミリ単位で、動かして、いる様なのです。
まだ17時台です、世界と世間は。
ピントを前にずらすとオレオレ君は歌い続ける、愛の歌英語de。
先程までの疲労はどこへやら、ピントを前に後にずらしながら
発車しない/オレオレソング(もはや真っすぐで憎めない)/官能、
というこの状況をただ感じることにしました。
電車が出発したのはもうしばらくしてから。
次の駅に着く頃、近くにいた男性がオレオレ君を讃えてチップを。



◉その女性と同じものをお願いします(食事オーダー時などに)。
 Je voudrais le meme plat que cette dame.
    ジュ ヴドれ ル メーム プラ ク セットゥ ダム



疲れがどっかいったのは、君(オレオレ)の歌の力かもしれないね。




チョコ有名店の店先。




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