最後の展示室に、コルビジェ自身が奥さんと過ごした海辺の別荘が再現してあった。
キッチン、シャワールーム、ベッド、収納、テーブル…
この全てが8畳の広さに収められていて驚いたのを覚えている。
その作りのどれもが使い勝手が良く、無駄がないのに無機質でもなかった。
それからこの礼拝堂にも興味が湧いて、
いつか行けたらとずっと思っていた。
そして来てしまった…また…おひとり様で!(ガクガク)
スイス・バーゼル駅から(駅構内でフランス国境入り)電車を乗り継ぎ約2時間。
着いた駅は私の地元よりも田舎。
無人駅から山道を登ること30分。
ぜーぜー言いながら冷たく澄んだ空気が美味しいのだった。
そして視界に入ってくる、丘の上のコルビジェが設計したロンシャン礼拝堂。
それまでの直線的な建築とは異なる、夢の中の建物みたいなむくむくとした礼拝堂。
屋根の黒い部分は下から見上げると大きな船のよう。
各所に物語を感じるような建物だった。
(ステンドグラスの趣味は???だったけれど)
ここで、同じく日本から来ていたMさんと芝生の上で休憩&雑談。
みんないろんな旅をしている。
Mさんがフィルムカメラで撮影しており胸を鷲掴みにされる。
更に地元のスケッチ大会中学生にからかわれたり。
『ねーねーお姉さん達中国人?きれい、写真撮ろうよ』
と地元中学生の陽気な安田(と命名)のiPhoneに収まる。
どう考えたって、君の同級生女子の方が私たちよりセクシーだよ、
いつも盛り上げ役ありがとな安田…元気でな…!
途中、(わかりやすく説明するならば)腰のひん曲がった高齢のシスターが
杖をついて何度も休みながら、礼拝堂に入っていった。
安田達が敬いながらシスターと話しているのが好きだった。
すっかり子供の顔になって。
後でまた礼拝堂へ入ると、もう誰もいないと思っていた椅子の間に小さく、
シスターは身体を屈めてずっとお祈りしていた。
帰り、そのシスターはすれ違う時
『あなた日本人ね。
昔パリの修道院で沢山の日本人シスターと一緒になったわよ。
みつこ、みやこ、なつこ、ね。』
と声をかけて下さった。
腰は思いっきり曲がっているけれど(かなり高齢だと思う、90歳とか)、
こんな風に信仰に人生を捧げ、ずっとずっと祈り、その力みも通り越して、
そして本当にそのまま終わろうとしている人がいるんだ。
「Bonne chance!」幸運を、そう言うと
『私も日本語で、あなたにそう言いたいものだわ』
シスターはそう言って、またゆっくりゆっくり歩いていった。
あんなにゆっくり歩く人を、私は見たことがないだろう。
思想が彼女の身体を越えていく時が、少しずつ近付いているのかもしれない。
これまでどれだけのことが彼女を通り過ぎただろう、
それでも残るのは穏やかでささやかな、こんな空気感なのかな。
私は彼女の、そんな時間を見た気がした。
なんか泣いちゃった。あなたエッセイストになったらいいわよ。
返信削除なれるもんならなりたいわい!
返信削除しかしね君、君の感度が良すぎると私は睨んでいるよ。
いやいや、ただの妄想族なだけ(笑)
返信削除でもホントに情景と空気の匂いが伝わってくるよ。
老いたシスターの歩いていく後ろ姿を私は見たね。そして涙。
その感受性にこちらの方がじーんとしてしまうよ。
返信削除後ろ姿で物語る人ってすごいね。
本人はそんな気ないのだろうけれど。
言葉もなく、ただただ心で感じてしまうZE⚡️