2014/09/25

文句あります

ぐっすり眠って、朝。
泊まっているユースが運河沿いだったから、
朝食を外のテーブルに運んで食べた。
寒い。気持ちいい。秋の空気。

女子部屋なので、いろんな国の女子をおかずに
(だってかわいいんだもん)身支度をして、
パリ在住のMさんと合流。
日本からの荷物をお渡し。お茶。
『会ってから伝えようと思ってたんだけどね、
P家のJMさんが二日前に亡くなったの』と。
昨秋フランスへ来た時、80歳のお祝いパーティに混ぜてもらった。
その主賓のムッシュだ。
『ごはんを食べた後、いつものソファに座ってね、
    気づいたら息を引き取っていたみたいなの』

JMさんは身体が弱ってきているものの、
ユーモアと威厳がおかしいバランスでひとつになったような、
格好のよいムッシュだった。
包容力を感じさせる今時珍しい男性的な雰囲気と、
毒舌的な笑い(大大大好物でござい)が、私は一度で大好きになった。
きっとみんなそうなんだろうな。
ぶっ飛んだことを言うのに、
こうして思い出すときちんとした印象が残っている。
きちんと分けられた髪、眼鏡の奥の決めつけない瞳、たっぷりとした身体を包むセーターと糊のきいたシャツの襟。
脚も心臓も、時間と共に動きを緩め始めていたけれど、
その内側に在るあの人にしかない感性は周りに独特の力を与えていたんじゃないだろうか。
発作が起こって入院することがあっても、
あの人柄だからすぐ病院の人気者になっていたそうだ。
"仏語はむつかしいかい?
  仏語とは、喧嘩であり、コミュニケーションであり、ふむ、そうだな、セックスでもある"
と言い放ってくれたのもJMさんだった。
迫力ある恐ろしい顔で凄んで、その後舌を出して子供みたいに笑って(しかも舌の先が尖ってた〜♡)。
震災後、確か文化交流で福島からの客人達を一家で受け入れたと聞いた気がする。
その時に貰ったという桐の箱に入った日本酒を出してきて見せてくれたなぁ。

JMさんに、苦しまずに終わりが訪れた。
家族と一緒の時に、ひっそりと静かに、いつもの場所で。
誰も驚かさず、怖いイメージを残さずに。

85や90は迎えられるかわからないからと
80歳のお祝いを、一年がかりで準備した娘さん。
それが本当になってしまった。
もう何年かは時間があるだろうと、勝手に思っていた。
"次は子供を連れておいで"って言ってくれたのにな。
もう次はないんだ。
十時間前にはまだいたのに。
離れてても、同じ太陽に照らされてたのに。

午後、飛行機に乗って移動。
お手伝い前の小旅行。
雲の上は光と白と、青しかなかった。
P家が暮らす街の、青い天井の教会に行きたいと思った。
神様、ちょっと早いよ。



    神様より
◉Ne te plains pas.
   (文句を言うな)











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